⑴.事業の目的は次のように定められている。
「本会は、現代の科学・技術・情報の著しい発展と内外の社会状況の急速な変化の中にあって、生活者、企業、行政が相互理解を増進させて各自役割を発揮して生起する課題の解決に取組めるよう、公平な立場からくらしと産業に関する諸問題の調査・研究、啓発活動を行い、もって社会経済の円滑な発展に寄与することを目的とする。」 (定款第3条)
敷衍すると、この事業の目的(理念)は生起する社会経済問題について企業、行政、国民・生活者間において情報を交換し学びあうことにより相互理解を深め、健全な社会を構築することにある。健全とはバランス、調和ということである。調和を求めるためには各自が異なる立場、意見を尊重し、同時に相互に共通点を見出し共生することに努めなければならない。変転する社会の中では新たな諸矛盾が発生する。これらの矛盾に対しては、固定的にならず、偏見を持たず、感情的欲求に走らず、理性・知性による弁証法的(弁論・討論・総括によって論証する)手法に基づいて進展を目指すことが肝要である。
⑵.事業の概要については次のとおり、5本の柱となっている。
- くらしと産業に関するシンポジウム、講演会等の開催
- くらしと産業に関する調査・研究
- くらしと産業に関する情報の収集
- くらしと産業に関する刊行物の発行
- その他、本会の目的を達成するために必要な事業 (定款第5条)
団体の特性について
・会員企業の持続的発展を推進し、健全な市場経済社会の構築を目指す。
・事業の推進にあたっては、生活者、消費者は生産の原点を正しく理解し、生産者、供給者は生活者、消費者の視点に立った事業、業務を展開することを旨としている。このような特性を持つ社団法人は他に類を見ないのではないだろうか。従って、「産業分類」事業分類に該当しないもので、既存の分類からすると規格外とみられている。
・事業は非営利を原則とする。
事業運営
役員構成
役員は、顧問、会長、副会長、専務理事、理事により構成される。出身分野は、エネルギー(電力、ガス、)、交通(JR、大手私鉄、航空、バス、タクシー)、メーカー(自動車、電気機器)、消費者団体、法曹界、学者、マスコミとなっており、官界出身者が含まれていない。いわゆる「天下り」に該当する人は皆無。これは、他の社団法人には見られない特徴といえよう。この背景としては、くらしのリサーチセンターが官ではなく、民の発意により創立されたことに起因するといえる。
しかし、後に見られるように行政としては各種の講演会講師を派遣し、貴重な資料・情報を提供するなど、事業運営に積極的に協力・参画している。
くらしのリサーチセンターの社会的役割
当センターの四半世紀にわたる事業を省みると、およそ次のようにまとめることができる。皆さまのご匡正をいただきたい。
○事業の理念は端的に申せば、健全な自由で民主的な経済社会の実現を目指すこと。
○これを実現するためには、行政、企業、国民生活者が相互に切磋琢磨する場が必要とな
り社団法人を発起した。いわば三者間の「相互教育」の場である。
○将来を展望すると、
・行政は引き続き世論の批判を的確に受けとめ、有能な人的資源を全体の奉仕者として活用することが求められている。
・企業は変転する国際情勢を収集・分析すること、企業の社会的責任または役割、「CSR(corporate social responsibility or role)」を自覚し、実践することなどの課題がある。
・国民生活者には、情報格差を克服する課題は大きい。これを実現するためには、IT機器に依存することなく有効に活用すること、同時に行政や企業との相互理解を深めるためには共動行動が欠かせない。「デジタル化」時代における人間行動のあり方も今後の課題といえる。
・気候変動問題は現代人に共通する課題である。脱炭素社会の実現(2030年までに40%削減)は産業界はじめ各層国民にとって、切実な課題と受け止めたい。
以上の諸課題を実現するためには、当センターの社会的役割は引き続き求められていると確信する。
創立33年といういわば「30にして立つ」時を迎えたばかりである。引き続き利益追求ではなく、公益性を重視した団体として社会経済の健全な発展に微力を尽くしたい。
事業推進の視点
・業際的
他業種事業について相互に学び合い、交流を深め、当該事業に活かす。
・学際的
事業の推進には専門を超えた知見が求められる。進展する科学、技術、文化について日常的に学習することが求められる。
・国際的
グローバル社会の中で生きる。事業を展開するのは国際情勢の掌握分析そして他国との交流が求められる。