〇くらしと産業をめぐる課題
1.国際紛争を止め平和共存時代を目指す。
わずか35年ではあるが、事業を通じて判ったこと、そしてその教訓は、歴史は未だ強者、勝者のためにつくられているということである。
国際間の紛争はロシアのウクライナ侵攻、イスラエルVSパレスチナの歴史的鬩ぎ合いが続いている。また、その背景には冷戦時代の対立構造が窺える。
こうした事態に対し関係諸国は主として軍事支援に勤しんでいる。
これでは武力による勝敗はあり得るが、平和にはならない。
平和に関する原則( 主権の相互尊重、領土不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和共存)をもって対話交渉を重ね、平和共存時代を目指すことが求められる。
古今東西、戦争は国民、兵士を犠牲にする。支配者は生き残る。
2.地球のエネルギー資源(化石燃料)の有効活用を求める。
近代国家の礎となった化石燃料は、その活用が気候変動に及ぼす影響から将来においてその役割の変質が求められている。
- 化石燃料(石炭、石油、天然ガス)産出国は従来の利益至上主義を改める時である
- 化石燃料消費輸入国においては総合エネルギー計画(我が国では第7次)を策定し、需給計画、適正価格を提示すべきである
3.物価高対策
「実質賃金24カ月連続低下」と報道される。
2024年春闘の評価、つまり賃上げは物価高に追いつかぬと云うことだ。
このところ政府は賃上げに関しては企業サイドに強く働きかけているが、物価対策についての政策は見当たらない。
国民・生活者の中には賃金労働者以外の人々も多数いる。物価問題はすべての国民・生活者に係る課題だ。考えてみたい。
物価高の要因について
(1)一般論としては自由主義経済社会では、需給関係のアンバランスに因り物価変動は発生する。
- ケース1 生産・供給量>消費・需要量=価格低下
- ケース2 生産・供給量<消費・需要量=価格高騰
- ケース3 生産・供給力の寡占化のケースでは契約自由の原則が機能せず、寡占価格となる。公共料金など一定のルールに則り、行政によって適正価格の調整が求められる
(2)輸入製品・商品価格は為替レートに左右される。
近年「円安」傾向が続いている(国債通貨ドル換算)
(3)円安傾向の要因と社会経済への影響
疑問は多い。専門家筋の解説では日本国の国力わけても財務力に起因するとされる。
<わが国の財務状況>―国際信用力の低下
国債(借入金)残高 1,297兆円(2023年末現在)
―世界一の借金大国―
国債費(支払利息等) 約28兆円
- 大切なことは国の借金目的、使途、効果をその都度明らかにしてきたのかだ。
因みに戦後初の赤字国債発行が決定されたのは1965(昭和40)年。以降歴代政権は国債の発行・残高と返還について注視してきたが安倍内閣におけるアベノミクス時代からは野放図となっている。
円の変動相場への移行は1973(昭和48)年から。端的に言えば輸入品の高騰は内政の失敗のツケ回しだ。 - アベノミクスは世界一の借金国をつくった。そのカネはトリクルダウンはなし、大企業の内部留保(540兆円)に回り、あるいは株価の高騰にみられるように投機資本に化けている。格差社会を拡大した。総括すべき時だ。
4.日本の国情にふさわしい国づくり―現代企業の指針。
東西冷戦時代の終結頃から新自由主義が台頭し、資本主義の優位性が強調されてきた。
その特徴は「利益至上主義」「株主資本主義」に見られる。そこでは従前の「人、もの、カネ」というプライオリティは、一にも二にもカネ(日米ではカネ=経済)時代となっている。カネで人、組織を支配する。自民党の裏金づくりが典型例だ。これでは企業献金による利権政治は改められまい。
企業は社会的存在であり社会貢献したい社会的責任を持ちたいものだ。
企業リーダーには大乗的見地に立った「忘我利他」の心が欲しい。
日本の国情にふさわしい国づくり「健全な市場経済社会」の構築を目指したい。
〇くらしのリサーチセンターの到達点と社会的役割
当センターの四半世紀にわたる事業を省みると、およそ次のようにまとめることができる。皆さまのご匡正をいただきたい。
1. 事業の理念は端的に申せば、健全な自由で民主的な経済社会の実現を目指すこと。35年間多くのことを体験し学んだ。しかし卒業式はなし。新しいテーマに取組みエンドレスだがやり甲斐はある。
2. これを実現するためには、行政、企業、国民生活者が相互に切磋琢磨する場が必要となり社団法人を発起した。いわば三者間の「相互教育」の場である。
3. 将来を展望すると、
- 行政は引き続き世論の批判を的確に受けとめ、有能な人的資源を全体の奉仕者として活用することが求められている。
- 企業は変転する国際情勢を収集・分析すること、企業の社会的責任または役割、「CSR(corporate social responsibility or role)」を自覚し、実践することなどの課題がある。
- 国民生活者には、情報格差を克服する課題は大きい。これを実現するためには、AI情報を鵜呑みにすることなく有効に活用すること、同時に行政や企業との相互理解を深めるためには共同行動が欠かせない。「デジタル化」時代における人間行動のあり方も今後の課題といえる。
- 気候変動問題は現代人に共通する課題である。脱炭素社会の実現(2030年までに40%削減)は産業界はじめ各層国民にとって、切実な課題と受け止めたい。
以上の諸課題を実現するためには、当センターの社会的役割は引き続き求められていると確信する。
- 人類の幸せ、くらしと産業の健全な発展のためには平和でありたい。
創立35年といういわば「30にして立つ」時を迎えたばかりである。引き続き利益追求ではなく、公益性を重視した団体として社会経済の健全な発展に微力を尽くしたい。